世界レベルの歌い手は、ことばをメロディにのせて歌っているのではなく、歌との距離をとって、音の流れのなかで自由に声で表現を創っています。歌のメロディや楽譜にべったりとくっついていないのです。日本の多くのヴォーカリストは30代以降(世界では60代以降くらい)は、流れに心地よい声が使えなくなり、音楽にも距離が出て、ことばで投げ方、感情表出に固めに凝りがち、しかもパターン化するようになります。
日本では、役者的なパフォーマンス力で、音楽性に欠けてフレーズ感が鈍っていても、インパクトとその反動の収め方でステージはもたせるのです。ステージとして、バックグラウンドに若い時からの音楽でつくった世界観が積み重なって、貫禄でもたせます。ファンが昔のベースを読み込んでくれるから楽しめるのです。ベテランになると、このベースへの観客の優しいノスタルジアでもたせることで満足しているかのようで、残念です。お客さんがナツメロとして満足しているならよいのでしょうか。