トレーナーのなかにも、声を分類して名称をつけ、その出し方を一つひとつ教えている人がいます。ヴォーカルでは、地声-裏声、ファルセット、デスヴォイスやエッジヴォイス、低中高音域の発声、ミックスヴォイス、日本人は、こういうことが大好きです。
私は当時、ボール球を打つ練習をしても悪くしかならないという例で、欧米人ヴォーカリストのとてつもなく高い声やダミ声(ハスキーヴォイス)をまねるような練習はしないようにさせていました。
テニスでも野球でも、基礎というのはいろんな球をいろんなフォームで打ち分けるのでなく、もっとも理想的な一つのフォームを身につけること、それで全てをシンプルにまかなうことです。
たとえば体で打つ、腰の入ったフォームを、球を打つ前に徹底してマスターします。
8×8のマップがあろうがなかろうが、そのど真ん中に来た球を百発百中、ホームランにできる力がなければ、通用しないのです。
プロが3割しか打てないのは、プロのピッチャーとの心理的駆け引きのせいで、次にストライクが来るのを読めたら、ほぼ、確実にヒットに(あるいはホームランに)できるそうです。素振りのなかで、8×8どころか、80×80、いや、イメージした線上に1、2ミリの狂いもないようにバットを運ばないと、ホームランにはなりません。物理的に考えたらわかります。
最大に力が働くところに、タイミング(時間)と空間の軸を瞬時に一致させ、ボールとバットの面での拡張、そして、ボールを運ぶのです。予測(勘)と、選球眼(ボールに手を出さない)、あとはストライクで、打てる球がきたら打つだけなのです。そのために、全身で統合し、シンプル化しておかなくてはいけません。そこにはバットにボールを乗せるとか、まさにイメージ言語でしか伝わらない世界があるのです。
ですから、3×3しか知らない人に、8×8の世界があることを見せるのは、よいことです。しかし、ここで64通りの打ち分けのフォームを教えても、どうなるでしょうか。多分、対応できようもありません。ゴルファーが、肝心の素振りを大してせず、チェックせずに、球とヘッドの角度を測ってばかりいるようなものです。測ってよくないのを知るのは大切ですが、00コンマ何度と考えて練習すると部分的に力が入ってしまうでしょう。全身を一つにして、アウトプットするということが、最大に優先されるべきなのです。
こうした状態の調整が使い方の工夫がメインになって、細分化されてばかりいくのはよくないことです。一方で、大きく条件をつけていくこと、つまり鍛えて変えるべきところを変えていくことを怠るのなら、本末転倒です。