仕事である以上、現場で要求されることが早急の課題となるのはしかたありません。私どもも、3~6ヵ月後のデビューやオーディション、1ヵ月後の結婚式の余興まで、真剣に全力で対応しています。
しかし、この優先度に振り回されている限り、もっと重要なことが後回し、遅れるというならまだしも、その可能性がスルーされたり、損なわれることも現実に起きているのです。
芸道やスポーツなどでは、器用さで、早く頭角を現したものの大成しない例はいくつもあります。才能や努力を評価するのは難しいところですが、後で大きくなるための基礎と、その時点で凌ぐだけのやり方は逆になることがほとんどなのです。
しかし、日本では若い時期のチャンスを優先する、実力がなくても若さで出られる、実力のないのが若さだから、それゆえ出られる。それが、歌い手だけでなく、声優、アナウンサー、タレント、役者に蔓延しています。それゆえ、若い歌手の素人声、「ジャニーズ声」というと、わかりやすいでしょうか、は誰でも出せるということです。大人になってもそう変わらないのです。彼らは、声の魅力で売っているのではないから、その必要もないのですが。