03.発声
ことばと歌と、どちらが先かというようなことは、定義にもよります。この2つを明確に分けることは、本当はできないのですが、それぞれに便宜的に分別しているわけです。しかし、私はストレートにことばのない歌、スキャットなどを考えたら、すぐにわかること…
私たちが意味をつけずに、ことばとせずに、声を発していることを考えてみるとわかりやすいと思います。たとえば文法上での「感嘆詞」です。「ああ」「あっ」「ええっ」などです。これは、interjection(英語)で、定義としては「不意の発声」となります。他…
原始的なものとして、反射作用で声をあげるということがあります。火に触ったときに「熱い」などと、考えるまでもなく私たちは反射的に避けようとします。手を離しながら「アチッ」というような、ことばになるかならないかの音を発します。「アッ」「ワッ」…
語感というのは、ことばを自分で発するときの感じと相手が受けるときの感じです。声を介し、私たちは自らの心身とも、他の人とも触れあっています。声は、自分の声帯の振動から相手の鼓膜の振動へ伝わります。空気中を伝わる音のバイブレーションなのです。 …
ものまね芸人を見ていると、意図的にいろんな音色をつくる能力を、人は持っていることがわかります。奥様には、「よそ行き声」と子供を叱る声が、1オクターブも違う人もいます。電話での応答で、相手によって別人になるのは、女性に限ったことではありません…
確かに発声法でなく、声そのものが変わっている人で、声でプロになっていく人もたくさんいるのです。 プロという声の定義はとてもややこしいのですが、私は、いくつか機能面をチェックとしてあげています。その多くは総合化したもの、声の使い方であって声そ…
魅力的な声 説得力のある声 強い声 よい声 安定している声 これらは、それぞれに違います。できたら一つの声(の応用)でまかなえるのが理想的です。すべて自由に変じて対応できるのが理想ですが…難しいものです。 自分の声を中心に、自分の声の中心をみつけ…
しぜんにお腹から出ている声では、レッスンとしてわかりにくいので、わざと、体や息を使っているようにみせるような“演出”が必要なこともあります。深い息を、無音なのに、有音にしてみせたりするのは、私も演出(先の「トリック」)として使っています。し…
大きな誤解の上で行われている一つは、「お腹からの声」「腹式での発声」「声量のある声の出し方」でしょう。質問にも多い事柄です。 高音に届かせたり、喉をはずしてクリアな声にしたいなら、そう出すことは調整でできるようになるのです。しかし、その実、…
基礎としての声をどのようにするかは大変な問題なのです。多くのケースでは、「シンプルに認める」か、「タッチしないでスルーする」というようにされています。 私は、これを応用力のある声と捉えています。 体の中心からの声で、共鳴した声でなく、共鳴を…
私が皆さんと接して使っている声は、もっとも私らしい理想の声やよい声というよりは、仕事を完遂できる声です。崩れずに8時間以上の持続に耐えられる声です。よい声かどうかは別にして、タフな声、強い声です。仕事に使うのですから仕事の声です。 レッスン…
誰もが歩いたり走ったりしていたらオリンピックに出られるとか、記録をつくれるわけではありません。高いレベルを求め、自分自身の不足を補い、能力を早く手にいれたいとなると、無理が生じます。その無理を承知の上でセッティングするのがトレーニングです…
声が基礎、でも基礎の声とは何か、ということが最大の問題です。人間としてもって生まれたもの、例えば顔などと同じで、時代や違いによってよしあしはあっても、正しいとか間違いとかはありません。今、流行の歌や声というならあるのでしょうが…。 「どの人…
本人の声と本人の理想とする声(憧れの声、モデルとしての声)とのギャップは、問題です。 声の判断基準は、いろんな人の声を聞いて、できてくるものです。多くの場合は、自分の声から目指すべき理想とイメージでの理想にギャップがあります。 すでにこれを…
歌い手は歌という作品で勝負しますから、1オクターブ半で3分間という単位を中心に考えます。ディレクターは、90分というステージ構成で考えるので、どうしても、こなす、まとめる、あげるという方向になります。どちらもベテランになるほど技巧者になります…
浅い声の人や弱い声の人は、日本人よりは、外国人に範をとることがよいでしょう。男性だけでありません。むしろ女性の方が、その差は大きいでしょう。文化的背景として、“かわいい”文化の先進国である日本の人は、早く大人になりたいという成熟願望をもつ人…
勘違いされやすいのは、体の声とか深い声といいつつ、喉を使い、押しつぶした声です。独力での自主トレでは、ほとんどの人が間違えてしまいます。憧れの人の声から、ハスキーを見本ととらえてしまう人にも多いです。 とはいえ、これを安易に今のトレーナーは…
つぶした声の方が感情が伝わりやすいし、声もコントロールしやすいという人もいますが、決して勧められません。つぶした声は、声質が悪く、声量・声域も狭くなり、不自然で細かなコントロールができにくいものです。しかも、長く休めると、もとの細い声に戻…
喉がすぐに痛むのは、耐性がないか、よい発声ができていないということになります。再現性は上達の前提です。声帯(喉)ではなく、お腹(横隔膜のあるところ)から声を出す感覚で発声することです。 ひずんだ声でこそ、伝わるものもあります。でも、喉の痛さ…
喉を鍛えると、ハードなやり方で得られる人もいますが、無理な人もいます。ケースバイケースです。喉が弱くても、自分の喉と声としての使い方をしっかりと知っていれば、大丈夫です。他人と自分とは違うのですから、自分に合った方法をとることです。ただ、…
自分のなかでの判断よりも、他人にどう聞こえるかで判断することです。ただし、しっかりした訓練ができていないと、せりふや歌うなかで、この自然な声を保つのは容易ではありません。 クセがあることがよくない理由は、再現性、応用性、柔軟性に乏しいことで…
[この項目は:『「医師」と「声楽家」が解き明かす発声のメカニズム』萩野・後野(音楽之友社)2004年より引用、一部省略] 歌謡曲やミュージカルなど、語りと同じ感覚で歌声を出すと、声が“前歯に当たる”感じになります。喉はやや上がり気味で狭くなります…
発声の仕組みを楽器のように考えてみましょう。 楽器の構造のように、私たちの体の発声に関する器官を四つに分けてみます。 1.呼吸(呼気)がエネルギー源(「息化」)(肺―気道) 人の体を楽器として、オーボエに見立ててみると、声帯は、そのリードにあた…
演劇の日本語は、欧米からみて音楽的なものではないために、日本語とまったく違う発声をしなくてはいけないと考えている人もいます。これは、おかしなことです。 歌での外国人との違いの何よりも大きな原因は、日本人の今の音楽が、欧米の言語にベースをおい…
プロの鍛えられた声というのは、すぐにわかるでしょう。かつて、声は歌唱や演技の重要な要素として、喉を鍛えたのです。その結果、プロの声となったのです。 声帯や体というのは、誰一人同じ人はいません。それぞれにめざす声も、声の使い方も上達のプロセス…