私は飽きっぽいタイプです。それがよくも悪くも「もっとも厳しい客」としての判断のできる資質になっています。今でも、声や歌を溺愛しているといえません。他によりよく伝わる手段があれば、それを使います。声や歌で邪魔するべきでないと思います。ヴォイストレーナーとしてはあるまじき本音を吐いています。
日本の声楽は、舞台どころか基礎レッスンでも、一部しか成り立っていないと、声楽家たちと一緒にやりながら述べています。私にしてみれば、一部が成り立つところをすごくありがたがって認めているといえます。ポップスのような、暗中模索のまま、「失われた20年」より、ずっとましです。
同じ曲、つまり、課題曲を1日に80人が歌うのを飽きないとしたら、モータウンレベル以上のアーティストを聞けた日でしょう。私はいつでも、そのレベルにセットして聞いています。
続けられているのは、皆様のおかげです。他のことは全て飽きてきたのに、わからないのが声の魅力です。
日本人に必要なのは、アーティストの努力を認めつつも、つまらないものにまで優しくしないことです。当のアーティストが伸びません。「ブラボー」と言うのはいいけど、言おうと思って準備してきて言わないようにしてください。