2012年末、松井秀樹選手が引退しました。スポーツ報知は、全紙面の半分を関連記事にあてました。松井のそっくりさんまでが、「まだ引退しない」と出ていました。恩師である長嶋茂男元監督の談話がのっていました。
天才は天才しか育てられないから、私たちは長嶋監督よりは野村監督に学ぶことを勧めていましたが、深いものを感じたので引用します。
私が長嶋監督の例を引いたのは、毎晩、帰ったらすぐに素振りを3回して、そこにいつもの音が聞こえたら、やめて食事入浴をする。聞こえなければ、聞こえるまで夜中も振るというような話でした。音でわかるというのが印相的でした。
第一線レベルにできあがっている人の場合、状態のチェックをして仕上がっていれば、そのままにしておく方がよい。何か不足していれば補って、元に戻しておくと。すべてを五感で捉えて判断する職人技での調整法です。
イチローの打席で構えるまでの“儀式”は、よく例に挙げられますが、長嶋氏のような調整は、客観的に自分の状態のベストを完全に把握していなくてはできないことです。コーチに頼るのでも、データに頼るのでもなく、自分の身体だけで確認するわけです。全身センサーのようであり、”野生の勘”と言われたゆえんです。そこでの手段は、特別なメニュや方法でなく素振りなのです。