表現は、伝わることが第一に大切ですが、本人の肉体とその使い方に負うダンスも、今や複合アート化した歌(というより音楽のステージ)とは、かなりのズレが生じています。日本のダンスのレベルはアップしました。Jリーグ並みで、世界に通じるトップダンサーが出て、クラシックバレエでさえ、一流の人材を出しています。
私はこれをスポーツと同じく、目で分析できることでの日本人の可能性の高さとして論じてきました。欧米型の体型でないと不可能とも思われていたクラシックバレエでさえ、日本人は成し遂げたのです。個人の力が問われ、評価基準がはっきりしているゆえに実力の育成される体制がとれるのです。
歌い手は、声の魅力がストレートに問われる海外と、タレント性でもカバーできる日本では、比較になりません。ミュージカルで比べると、とてもわかりやすいでしょう。今の日本では女性アイドルやタレントで主役ができてしまうのです。実力派の歌手では務まらない―そこが問題です。歌への日本の観客の許容度は大きく、そこで求められるレベルが甘いからです。