歌の3要素は、メロディ、リズム、歌詞です。それぞれ外れたらわかります。つまり、それは間違いとして正しやすく、レッスンがしやすく、トレーナーやプレイヤー(伴奏家)の仕事として成り立ちやすい、のです。かつて、作曲家や伴奏家、つまり、ピアノやギターの弾ける人が歌の先生だったのです。それは、トレーニングというより、歌を覚えることと歌唱リハーサルに近かったのです。
音の高さは唯一、声において確かです。ピッチ(音高)はすぐに測れます。耳でもピアノでも正しいか間違いかがわかります。ただ、これも正しいだけでなく、心地よく伝わる流れで、深いというレベルの基準があるのです。高い声に届いていないとなると、届かせるのが目的となります。困ったことに、届いている声でよしとなります。
それに対し、声量や声質(音色)はわかりにくいです。つまり、分けたときに無視されやすいものです。
当時でさえ、そういうヴォイトレのなかで、声量を優先していたのは、皮肉なことに、今のここのパートナーをはじめとする声楽家です。声が届かなければ、働きかけもよし悪しもないからです。
あてただけの歌声を認められなかったのは、私の声=歌へのこだわりでした。