歌い手の価値は、声に加え、歌=音楽での創造性です。音色を動かしてデッサンしていくのです。そのイメージのオリジナリティと実現力が問われます。色と線でのデッサンです。最初はイメージからですが、自分のもつ声の上にセッティングできるかを問われます。
多くの人はできないので、自らの声の延長上に、そのイメージを声でつくっていくことがステップになるのです。楽器の音のように自由に動いてくると、それがフレーズになります。組み合わさって作品となるプロセスを踏むのです。私が求める基礎というのは、ここのことです。
どう作品にするのかは、ヴォイトレでは、応用された表現として、基礎を掘り下げる必要性のためにみるのにすぎなかったのです。しかし、音響の発達で声の不足が補われてしまい(ごまかされてしまい)、その分、その人の表現からのデッサンを、必ずしも声と関わらせることなく折りこんでみるようになりました(特にポップス歌唱において)。
邦楽の人や役者をみるには、この基礎をもとにすると、同じ土俵でトレーニングできるのです。