机の下にもぐって頭を上げたときにぶつけて、ものすごく痛い体験をしたことはありますか。それは、リアルに働く力の大きさを教えてくれます。自分で思いっきり頭をぶつけようとしても、ここまでストレートな痛みは生じない。限界まで頭を打ち付けようとしても、死ぬつもりでなければ、どこかカバーしてしまいます。死ぬ気でぶつけても難しいでしょう。
しぜんに頭をぶつけたとき、腰を中心に脱力したときに最大の力が働いているから痛いのです。漫画なら、頭蓋骨が黒でフラッシュアップされる、そういう瞬間は、理想の心身状態です。そこで発声共鳴もしたいほどです。
それでは他人にぶつけてもらう、といっても、殺す気でなければ、カバーしてしまうでしょう。そこで手加減しない覚悟をもつのは、自分に対しては自分でしかないわけです。
そこまで覚悟した師がいるならつけばよい、殺される可能性の方が高いし教えてはもらえないでしょう。だから、盗むしかない―それが暗黙の了解の上での技の伝承であったと思います。弟子をとるというのは、師の覚悟なのです。
誰でもよいから何か驚かせてみろよというくらいの関係もあると思うのですが、驚かせることをできるのは、限られた弟子でしょう。