音色を、まるで染物のようにしめたり絞ったり、声を歌へと編み上げ、色づけしていくのは、邦楽の方が多彩です。あるいは、エスニック音楽、ワールドミュージックといった民族音楽での歌唱です。それは、輝き響く声、柔らかく強い声を、オーケストラという大音響を抜けて会場の隅まで飛ばせることを条件に求めるオペラと異なります。どのような価値観で判断するかは、その世界、そして指揮者や師匠の感性です。
一流のものは、シンプルに飛んできて、聴く人の心にしみ入り、何か奥深いものを感じさせ、宿したり、動かします。声が違うというよりも表現の働きかけが違うのです。基礎の上で離反した本人独得の表現だから、トレーナーが云々できないし、コメントしても仕方ないのです。