本番前の状態を整えるには、バランスをとることをメインにしておけば充分です。喉を疲れさせてはなりません。
最初からベストで出られるようにするオペラと、ライブの経過とともに調子を上げていくことの多いポピュラーとは、若干、異なるでしょう。ポップスといっても1,2曲だけの出番というなら、歌う直前にベストにしておくことです。
私は他の人のステージを表から裏までみてきたので、歌の怖さを知っています。リハーサルでベストが出たのをみると、本番はかなり神経質になって、天にも祈る気持ちでみています。よいできであったら幸い、リハーサルを超せないどころか、最悪の結果になることも少なくないからです。
客席が埋まっていないリハでは、聞こえ方も違います。ライブでは問われるものも違います。作品としての完成度よりもステージとしての完成度が問われます。
確かな技術がある人でも、楽器のプレイヤーのように番狂わせがないことがない分野だと思います。どんなにレッスンでよくても、本番が必ずしもそうなるとはいえないし、逆に前日やリハではどうしようもなかったものが、二度とできないほどのベストの仕上がりになることもあります。一流のプロやベテランよりも感動を与えるデビュー新人の一曲や、ド素人のビギナーズラックもあります。楽器のプレイヤーでは起こりえないことです。