一人で指導している人は、その人に合わない人が辞めていくので、もっとも大切な、自分に合わない人への対処について、あまりにも学べていません。残るのは、自分のやりやすいタイプか自分のやり方に合わせられるタイプで、そこでの効果から全てをみるからです。これが、歌のうまい人は声楽家のところで伸びるが、下手な人はもっと悪くなると、竹内敏晴氏の疑問への回答の一つです。
私は心身が丈夫というか、人並みなので、そこの弱い人への対応は遅れました。心身が弱い人へは、それを克服してきたトレーナーが適任で、その経験を基に対応してくれます。私は喉が弱く大声も出なかったので、そこがもっともベースとなりました。それと同じく、有能なアーティスト、歌手、トレーナーが、一般の人への対応にうまくいかない。これは実質面でのことです。
特にクレームがあるからでなく、本当はもっと力がついていなくてはいけないのが、少しうまくなって止まっているのは、「教える人が有能ゆえ、他の人に対して無能」ということなのです。
ヴォイトレはトレーナー本人が「有能なところこそ、対処に無能になる」です。この有能さを他人に活かすには、トレーニングの長い経験と、他のトレーナーからの気づきが必要です。