三人の煉瓦職人に「何を作っている」と聞いたら、それぞれ「壁だよ」、「家だよ」、「街だよ」と答えたという話をしたことがあります。ここからは、本人の目的と方法と、それを教えるトレーナーのスタンスについてです。
目的が、高い音にともかくも届かせることなら、普通の人でも、4、5オクターブは出ます。(歌はなぜ2オクターブ内なのかについて述べたことがあります)トレーナーが「誰でもそのくらい出せます」と声域を拡げることだけを教えるなら、あなたもその日のうちに3オクターブくらい出せるでしょう。
もちろん、歌ですから歌える声であることが必要です。では歌える声とはどういう声でしょう。その判断のレベルが、トレーナーの質を分ける大切なところです。その高さにギリギリ届くところでよいのでしょうか。ピアノでいうと、両端のキィでは、ピアニストでもあまりよい演奏は期待しにくいでしょう。
研究所ではその基準を、一応は、声楽でとっています。といっても、声を出す支えについてで、オペラで通じなくてはいけない声、というレベルではありません。発声において、確実にリピートできて、しぜんな共鳴を伴うのが基本です。大きくも長くもでき、メロディやリズムも発音も対応できた方がよいということです。このあたり、質の問題です。