頭声と胸声の音色を、どのようにして捉え使っていくかが問題の本質です。私は「統一音声」ということばを使っています。富田浩次郎氏が、俳優訓練の本で使ったことばで、その意図もありました。
私は、当時の薄っぺらい歌唱、発声へのアンチテーゼとして、胸声でのレッスンを中心にしたのです。ファルセットや頭声からのレッスンでは、最初から調整、コントロールに、絞り込んでしまいます。成果の個人差での、よしあしの差が大きく、うまくいかないことも多いのに、です。
これは、発声を喉をはずして共鳴レベルで捉えること、つまり異次元の感覚です。話している出やすいのど声が出てしまって、うまくいかないから、声楽家は高い声中心から始めることが多いのです。
呼吸や共鳴の問題であれば、胸声でも同じです。私はアプローチとして「背中から出た声が、胸の真ん中に集まる」という感覚を、自らの体験から「支え」ということばで示しています。