日本人の会話は、ときに音楽的と言われます。時に方言はそのように聞こえるようです。日本語は、母音がつくものが多く、濁音や詰まるような音があっても柔らかく聞こえるからでしょうか。
私の海外滞在の経験では、リスボンの街のポルトガル語を、もっとも音楽的に感じました。でも、どの国のことばも音楽的に語れる人がいます。聞く人、話す人によるでしょう。
戦後の日本人は、英語っぽいDJをかっこよいと聞きました。それは英語そのものでなく、英語の語感、特にリズムと音色ではなかったでしょうか。今もそうでしょう。世界中でもそういう傾向です。それは世界におけるアメリカの強さの象徴だったでしょう。
一方で、日本古来の音や声の響きを、私たちは快く感じているはずです。ただ、それはTVやDVD、CDなどで聞くのではありません。神社、お寺などの場において、です。あるいは、そういう臨場感をもたらす映画のシーンなどにおいて、でしょう。
歌のように聞こえる会話は理想です。それは恋愛中のカップル、あるいは、老境の夫婦の会話、楽しい家族の団らん、喃語からことばを覚え始めた頃の幼児たちの会話などでしょう。そこでは、ことばでの意味は不要だからです。意味がないから共鳴しやすいのです。