歌も声の使い方の一つですから、使うレベルが下がれば、業界が衰退していくのはあたりまえです。これまでも、そうして多くの芸は消え、また新しい芸が生まれていったのです。役者も声優も、同じで、声の力は、明らかに不足してきています。他に補える要素が大きくなったので目立たないだけです。ベテラン勢の声に太刀打ちできなくなってきています。それは、どういうことなのかをよくよく考えてみる時期にきていると思います。
トレーナーにも責任がありそうです。いかにも自分の“特別なヴォイトレ”が絶対に必要だとクライアントに思い込ませてしまうようにもみえるからです。相手の必要に応じ、もっともよいメニュを使うのは当然のことですが、引き受ける前に、今の本人にとって、自分よりもよい専門家がいないかを考え、思い当たったら、そこに委ねるくらいのことはすべきだと思います。現状の複雑な状況では、いかにカリスマトレーナーでも、一人で全てのタイプのクライアントにベストな対応ができることはありえないからです(最初につくトレーナーの影響力は大きいので、その前に一歩、立ち止まって考えてみることをお勧めします)。
私は、声楽、ミュージカル、ポップス、演歌といった歌い手、声優、ナレーター、アナウンサーなど、声を使う職業で分けてみたり、どれかの分野に固執したりはしていません。早い時期から政治家からビジネスマン、就活、婚活する人のニーズにまで応じてきました。
声であれば、基礎の基礎は同じです。少なくとも、そこで行うのが本当の意味で基本のヴォイストレーニングと思うのです。