私は、最初、プロデューサー、作家と仕事をしたので、自ずと彼らの聴き方を学ぶことになりました。そこで自分の聞き方の偏り、あるところに対しての、バランスの悪さや弱点を知りました。聞き方が確立するには、発声がそれなりに身についたあとも丸々10年かかりました。その後半は、ヴォイトレとステージの狭間で実習しました。
例えば、ここの研究生への聞き方、4、50人の研究生の後ろから同じものを聞いて比べる、10人ほどのトレーナーの聞き方、研究生やプロの歌唱へのコメントと比べて学ぶなど、研究所で実践してきたことです。
私の研究する場としての研究所の公開による研究現場の伝承が、レッスンとして大きな役割を果たしてきました。
自分の聞き方に囚われず、自分の聞き方も違う聞き方を学んでいくことです。一流のアーティストの歌から、特に、彼らがスタンダードを歌うときにつける変化から、それぞれのアーティストの本質を学べます。
なかでも5人ほどのアーティストからは、その感覚にのっとれば、私にはわからなくとも、このアーティストなら、「こう言う」「このように歌う」とか、あたかも憑依するようなことができるようになりました。どんなすぐれたアーティストもそうして学んだはずです。