息でつくる声のタイプについて述べます。
ポップスでは、マイクが使えるのでウィスパーヴォイスでも伝わります。それは応用として考えた方がよいでしょう。息声、ささやき声は、声にしないので声帯は休まりますが、喉は動くので疲れます。声にしない分、共鳴効果はないのです。力が入ったり乾燥したりして痛めることもあります。
トレーニングメニュとして、息で読むことを勧めるトレーナーと、それに否定的なトレーナーがいるのは、そういう考え方の違いです。目的が違うのです。そこを理解せず正誤を考えても仕方ありません。
私の基本ルールは、どのトレーニングにもメリット、デメリットがあるということです。メニュそのものでなく、目的と使い方によるということです。どのトレーナーにもよいところも悪いところもあります。それを知った上でよいところを活かし、悪いところに囚われないことです(一時、悪くなってもすぐに気にしないこと、ヴォイトレは必要悪と私は考えています)。☆
日本人の最近、といっても、ここ30年くらいのハスキー声は、つくり声が多く、ここで述べた息声のような問題をはらんでいると考えるとわかりやすいでしょう。
「息を声にする」ところを、これまで発声原理の声の“発生”として述べてきました。普通に「息が声になる」のも意図的に考えるとふしぜん、作為的でさえあるのです。
共鳴する母音に対して、共鳴しない子音は、無子音、k、s、tなどです。カ、サ、タではありません。「s―」は息のトレーニング、「z―」となると声のトレーニングです。
つまり、声になる息はよいのですが、声にしない息はリスクをもちます。前者の息は声の基本ですが、後者のは声の応用です。
簡単に言うなら、ハスキーな歌声は、健康的な声帯なら、ワンクッション加工しているということです。フルスイングのフォームで打つところをハーフスイングでボールに当ててしまった。イチローのように、フォームのなかで微妙なコントロールができるレベルならよいのですが、プロのなかにでもそうはいないでしょう。それをまねるとぎこちなく、中途半端になり、そのふしぜんなフォームは、腕とか腰とか、どこかに部分的な負担をかけて痛めたりするリスクを生じるということです。要は、体の原理に合っていないのです。合わせるには、よほどの基礎がいるということです。