アーティストは、自らの練習や活動のなかで、感覚的に聴衆の求めるものを出していきます。自らのやりたいものと人の求めるものは、必ずしも一致しません。
トレーナーとして、私は本人のものを重視しますが、プロデューサーは、お客の求めるものを重視します。これもあたりまえのことです。
そのときに、切り出す作品の演出にかけるプロデューサーと、安定した高度な実力をつけて、生涯安定してよい状態で声を出せるようにしたいトレーナーとは、対立する関係です。仕事ということでは、売れてこそ将来もあるのでトレーナーが妥協しがちです。すぐ得られる効果と評価をみているのでは、長期的なハイレベルを理想の追求に専念できません。
アマチュアや一般の人の方が、その自由があるので、私は一時下野して、一般の人との試みに専念していました。その間、音楽業界、特に歌い手や音楽プロダクションは、浅い声での安易な音づくりで売れ線を狙い、結果として、自らの首を絞めていったともいえるわけです。