「できない」とか「うまくいかない」と思うのは仕方ないとしても、発声や歌で悩んだり苦しむのは逆効果です。レッスンやトレーニングは楽しみましょう。
できないことをやるからめげるのです。できなくても、うまくいかなくても、先に行けないのではありません。ずっとできないし、うまくいかないかもしれません。それがわかったら、いくつも道があるのです。多くの場合、そこが曖昧なままだから深まらないし、抜けられないのです。
同じことをくり返す。そして深める。できることをくり返す。確かにできるようにしていくのが本筋です。
日本人はどうも学ぶプロセスに1、2、3…10、11、12、…20と考えがちですが、実のところ1→2→3とうまくいかないから、1→2→6、1→6→2などが起きます。声や歌に10も20も必要、基礎の力がある方がいいとはいっても、必ずしもその10、20が必要なのではないのです。両方が人より足らなくても100に近づけることも可能なのです。
声そのものの可能性に見切りをつけるヴォイトレもあってもよいでしょう。それだけがレッスンでも、まして表現でもないし、人生でもないのです。
だからこそ表面上、ある音に声が届いたとか届かないとかに振り回されて一喜一憂するようなヴォイトレは卒業しましょう。自分の個性、可能性、限界の全てを明らかにしつつ、より深く丁寧に声の世界をつかんでいくようなスタンスで構えてほしいのです。