呼吸については、浅はかと考えざるをえないことが具体的にいくつかあります。呼吸は体と密接に繋がっているのです。
「腹筋トレーニングは害だ」ということ、これは「腹直筋」は発声に直接、関係ないから鍛えない方がよいというような類のものです。「ボディビルダーのように筋肉をつけても、マラソンや100メートル走で優勝できないどころか、走るのに邪魔になる」という理屈でしょう。
初心者には、アスリートなみの筋肉を持つ人は少ないでしょう。アスリートの筋肉をもっても声がよくなるという保証はないのですが、その上で、体力、筋力は、欲を言えば、彼ら並みにあった方がよいのです。それと、彼らのメンタル力だけでも、歌手や俳優の必要条件のおよそは満たせると思います。
大体、そういうことを言うのは、両極の人です。スポーツなどで、すでに鍛えられた筋力をもつ人と、その真逆の人です。体の弱い人やあまり運動したことのない人にも多いのです。なかには腹筋が弱い人もいるでしょう。
最低限の腹筋をつけずには、歌やせりふは言うに及ばず、舞台で30分、集中力を欠かさず立っていることも難しいでしょう。普通の人なら、声をよくするのに心身を鍛えること、柔軟にすることがもっとも効果的なアプローチだと思っています。まして、弱い人なら効果倍増です。ですから、その逆のことを知識として習得することは余計なことです。
害になるとしたら、「カール・ルイスがバスケットの筋トレをしたら100メートルが遅くなる」というようなハイレベルにおいてです。舞台においては、心身の力、体力や集中力は余りあるほどつけて損することはないというのが、現実のアドバイスです。