トレーナー、師匠、先輩などを追うことの是非を述べてきました。最初は上の人を目指していくのもよいのですが、いずれ個人的資質の違いでの限界が出てきます。師が名人であるほど、それはうまくいかなくなります。名人に直接つくのはハイリスクなのです。
限界がみえてからは、一時止めて、上でなく、どの方向にどう伸びるかをみます。そこから、丸や正方形としての拡大、膨張でなく、楕円や長方形のように、方向をもって器を広げていくのです。ところが、ここで歌手なら、一方的に声域や音程が優先されてしまうのです。
声優などでは、先述のb(器の応用)の中、あるいはc1(器の外)くらいで7つくらいの声を使います。仕事ではa(今の器)の自分のど真ん中の声は使えないこともあります。
しかし、私はaを拡大してのbとして、オリジナル、自分の声、本当の声というのを想定し、b、cの声を使っても、aに戻すクールダウンを課しています。
aは、何時間どう使っても大丈夫の声、bは、制限のある声、cは、リスクのある声です。
ここで、やり方でやる人は、cが問題と思ってcばかりやるのです。が、基本はaをやることです。そして調子のよいときにb、cの応用をしてみること。それが仕事から声を守ることになります。できたら、表現や、作品をaの範囲内で行えたら理想です。
私が外国人の歌手をみて、羨ましいのは、aが日本人のbよりも広く、そこで歌まで処理できているからです。これは結果論で、本当はaで歌うものなのです。☆
向うから輸入されてきた声域に追いつかせようとしているままの日本人、声優やミュージカルはともかく、ポップスやカラオケでも、個性より、まねをとりたいメンタルを何とかして欲しいのです。