科学的なことを求めるにも、解剖学のような動かない図版や、発声の声帯振動、横隔膜の動きといったメカニズムでの知識は、実践や声の育成には、大して役立ちません。レッスンという現実の場のなかで、科学的な態度のとり方としては検討していくことは重要です。そして、実行することでしょう。データをとり複数の人で共有し、ケースごとに検討し、調整の記録を残すことです。レッスンだけでなく、定期的にトレーニングのなかでの変化をみることも必要です。
知覚する対象は声についてですが、その良否は、先生、師匠、トレーナーとの間に生じます。やっかいなことに、よほどのプロでないと、その日のトレーナーの与える雰囲気一つで、声は変わってしまうのです。
本人だけでなくトレーナーもまた、何かを知覚した時点で、他の事は無視、見逃し、スルーしてしまうものです。複数回を重ねるうちに、チェックする中心を分けて対応しているのですが。でも、一人のトレーナーである以上、盲点はできます。そこは、別のトレーナーがそこに盲点のできないようにフォローするのがよいのです。